NYワインの祭典『NY Drinks NY Grand Tasting』
3月26日(火)にニューヨークにて、ニューヨークワイン&グレープ財団主催の『NY Drinks NY Grand Tasting』が開催されました。これはニューヨーク州の主要ワイナリー約50社がマンハッタンに一堂に会する大試飲会。ニューヨークワインにとっては最も身近であり重要なニューヨーク・シティのレストラン、小売、卸業者に直接ワインをアピールする勝負の場でもあります。
第8回目となる今回のイベントに私・後藤も3年ぶりに3度目の参加を致しました。昨年夏にニューヨークワイン&グレープ財団のトップが大幅に入れ替わり、世代もだいぶ若返ったことにより、財団の方針も大幅に変わりました。開催場所もかなりアップグレードし、SNSを使ったイベントPRにもかなり入れておりました。
新たな開催場所はロックフェラー・センターの65階にある伝説のレストラン『レインボールーム』。1934年の開業以来、数々の著名人がよく訪れることでも有名で、マンハッタンの景色が一望出来ることでも人気です。2012年にはニューヨークの公認ランドマークに指定された、ニューヨークを象徴するスポットです。ここでイベントを開催することで、世界でも珍しい大都市を抱えるワイン産地『ニューヨーク』を打ち出そうという思いがひしひしと伝わります。
昼間は業界関係者向けの試飲会に加えて、生産者やソムリエなどを対象にニューヨークワインの課題や展望を話し合うセミナーも同時開催。モデレーターには世界的に有名なソムリエやエデュケーターを起用。今年のテーマは「ニューヨークのハイブリッドの過去、現在、未来」と「ニューヨーク州における赤ワイン品種の探求」と興味深いものでした。
一口にニューヨークワインと言っても、ニューヨーク州は北海道と九州を合わせた位の面積があり、そこに6つの産地が分散しております。そのため、なかなかすべてのワインをカバーするのも難しく、生産者同士の交流の機会もまだ少ないです。各産地は気候的にも違いがあるので、一度に比較することでそれぞれの産地のワインの特徴を把握するにもいい機会。生産者にとっても、ワインを伝える側のソムリエや流通の人達にとっても重要なイベントになっております。
試飲会に出品されていたワインは主に白がリースリング、シャルドネ、ゲヴェルツトラミネール、ピノ・グリ。赤がカベルネ・フラン、メルロー、ピノ・ノワール、もしくはそれらのブレンドでした。そして、大半のワイナリーがロゼワインを出していたのも特徴です。ニューヨークは今や仏・プロバンスに続く、世界第二位のロゼワインの消費地なので、ロゼワインの需要が非常に強くなっております。
産地ごとのワインの特徴も出ていました。
NY州最大の産地であるフィンガー・レイクスはブドウ栽培農家から始まってワイン造りを始めたところが多く、生産量は1万ケース前後で、キレイな味わいのワインが多い。マンハッタンのレストランでもオンリストされているニューヨークワインはフィンガー・レイクスのワインがダントツで多いです。まだ土地もたくさんあり価格的にも安いので、若い生産者が増えているのもこの産地です。
一方、ロングアイランドはマンハッタンから車で約2時間の距離であり、ニューヨーカーのサマーリゾート地としても人気なのが特徴。土地の価格はかなり高いので、しっかりとした資本が必要です。NYの中では温暖な地域なのでボルドースタイルの赤ワインに加えて、海に囲まれシーフードの豊富な土地柄なので、それに合うすっきりとした白ワインやロゼが人気です。そして、マンハッタンからの訪問者も多いので、デザイン的にもお洒落なものが多いです。夜の一般消費者の部でも、身近なワイン産地ということもあり、多くの人達がブースに集まっていたのも印象的です。
ハドソン・リバー地域はマンハッタンからは近いが、まだワイナリーが分散しているためワイン産地としての認識度は低め。歴史的には古い生産者が多く、そのほとんどが家族経営の規模。品種的にもまだハイブリッド種のワインがあました。ただリースリング、シャルドネ、カベルネ・フラン、ピノ・ノワールなども増えてきている様子。
以上にように、いまのニューヨークワインの全体像を俯瞰してみるにはとてもいいイベントでした。
今後、新生ニューヨークワイン&グレープ財団によって、益々とニューヨークワインの認知度が上がり、洗練されたイメージが出来ていくと思います。