ブドウ収穫体験 in フィンガー・レイクス
9月末の気持ちのいい秋晴れの一日に、ニューヨーク州フィンガー・レイクスのワイナリー「Heart&Hands」にてブドウの手摘み収穫を体験してきました。このワイナリーは夫婦二人で経営している小規模ワイナリーで、生産量は2,000ケース程度。そしてNY州ではとても珍しいピノ・ノワールの製造に特化しているワイナリーです。規模が小さい事もさることながら、ピノ・ノワールという品種はとてもデリケートなので、ブドウの収穫から醸造までのほとんどを手作業で行う事にこだわるオーナー、トム・ヒギンス氏の指導のもと、ブドウを一房づつ収穫していきます。
採ったブドウには細心の注意を払い、腐っていたり、虫や鳥に食われている粒がないかも確認していきます。場所や日当たりの向きによっては熟していないブドウの房もあり、そういったものは採りません。また中にはブドウが干からびてているものもあり、それらの粒は一粒一粒手で取り除いていきます。
細かい心配りをして収穫されたブドウは、とてもきれいです。手摘み栽培も作業そのものは単純ですが、一年間かけて大切に育ててきたブドウを、ベストなタイミングを見計らって手作業で収穫するのには、コストやリスクも伴います。季節労働者を雇って収穫しているところも多いのですが、その労働者に対する支払い方法もブドウの重量ベースにするか時間ベースにするのかで、集められるブドウの質がかなり変わるそうです。こういったことはまさに現地に行ってみて初めて分かることでした。もちろん、Heart&Handsでは量より質を最重視するために、時間ベースでの支払いを行っているそうです。
ブドウを収穫した後は、「破砕」の作業です。破砕とは、収穫したブドウを軽く潰すこと。これにより果汁が外にあふれ出して空気に触れることで、アルコール発酵が始まります。現在大半のワイナリーでは、この破砕のプロセスを機械で行うのですが、手作りにこだわるHeart&Handsでは、もちろん昔ながらの足踏みで破砕します。これには、ブドウの種や果梗(軸の部分)を潰さずに果皮と果肉だけをつぶして果汁をだせるというメリットがあります。
最初はプチプチと不思議な感覚で面白かったのですが、だんだんブドウが潰れて果汁が増えてくると足を上げるのが厳しくなってきて、想像以上の体力仕事でした。足踏みすること約20分。だいぶ果汁が出てきました。
今回の体験を通して、ワイン造りの大変さを体感しました。いいワインを造るには最適な土壌や天候が揃っているだけでなく、どれだけ丁寧にブドウを栽培、管理、収穫し、そして発酵、醸造を行っているかも大切です。NY州のワイナリーは決して歴史は長くありませんが、若い生産者たちが良いワインを造ろうと、みな真摯に努力しています。今後、さらにNYのワインが米国内や世界的にも評価を高めていくだろうと改めて実感させられた体験でした。